社会保障の財源の在り方 ――社会保険方式と税方式をめぐって――
https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/14788703.pdf
著 : 増田雅暢
収録紙 : 季刊社会保障研究 第 36 巻 第 1 号 (2000 年 6 月刊行)
社会保障制度、特に社会保険制度の財源の在り方の議論
社会保険方式と税方式
社会保障の財源について、社会保険料から税への変更の考え方が広まってきた背景
2000 年ごろの連立政権の在り方と政治主導という政策決定志向が大きな影響
かねてから消費税の福祉目的税化を主張してきた自由党が、1999 年 1 月から自由民主党と連立政権を構成
介護保険制度の創設は、従来租税を財源としてきた老人福祉分野の措置制度を、社会保険方式に切り替える大改革
措置制度の問題
利用者のサービス受給の権利性が乏しい
応能負担方式の費用徴収制度によりサラリーマン OB にとって高い利用者負担額となる
など
厚生省は社会保険方式の利点を強調する考え
戦後の社会保障制度は、国民皆保険・皆年金体制を基盤として、社会保険方式を中心に整備・発展してきた
社会保険方式の利点
1. 個人の自己責任を基礎としながら、相互扶助によって支えあう成熟社会では、給付と負担の関係が明確で、給付の権利性が強い社会保険方式がふさわしい
給付と負担の関係が明確というのは理論としてはそうかもしれないが、実際にはそれが活かされていない
保険料と保険給付の関係が年々弱くなっている (老人医療費の相当部分が現役世代と公費で賄われている)
2. 保険者のインセンティブが働くため、保険者の努力により給付の適正化に資する
3. 主要国でも年金、医療共に社会保険方式が一般的
自由党や経済戦略会議は税方式の利点を強調
少子高齢化の進展の中で、社会保険方式では限界だし、世代間の不公平がある
社会保険の未加入問題や、保険料の未納・滞納なども